後継者不足はなぜ起きる?中小企業の実態と、後継者・二代目経営者が今からできる準備

経営者の高齢化が進む一方で、事業を引き継ぐ人材が見つからない——。「後継者不足」は、いまや一部の業種や地方企業だけの問題ではなく、多くの中小企業にとって身近なテーマになっています。

本記事では、最新の調査データをもとに後継者不足の実態と原因を整理したうえで、一般的な解決策を確認し、さらに後継者・二代目経営者ご自身が「今日から」取り組める具体的な準備についても解説します。

後継者不足問題とは?最新データで見る中小企業の現状

帝国データバンクが2025年に発表した「全国後継者不在率動向調査」によると、全国の企業における後継者不在率は50.1%となり、7年連続で改善が続いています。約27万社を対象にした調査で、依然として2社に1社は後継者が決まっていないか、不在という計算です。

業種別に見ると、建設業が57.3%と最も不在率が高い一方、今回の調査で初めてすべての業種が60%を下回りました。地域別では秋田県が73.7%で最も高く、三重県が33.9%で最も低いなど、地域差も大きいのが特徴です。

また、社長の年齢別に見ると、30歳未満の若手経営者では不在率が83.2%と非常に高く、50代では58.3%、80代以上では22.2%まで下がります。年齢を重ねるほど後継者が決まっている割合が高くなる一方、若い経営者ほど「まだ先の話」として準備が後回しになりやすい傾向がうかがえます。

もう一つ注目したいのが「脱ファミリー化」の動きです。近年は親族への承継よりも、社内の役員・従業員への昇格による承継が上回るようになってきており、後継者の選び方そのものが変化しつつあります。

後継者不足を招く4つの原因

1. 少子高齢化による後継者候補そのものの減少

若い世代の人口自体が減っているため、後継者となり得る人材の母数が構造的に少なくなっています。特に地方では、若者の都市部への流出も重なり、地域全体で後継者候補が不足しがちです。

2. 経営環境の変化に対する先行き不安

物価上昇や人手不足、デジタル化への対応など、経営環境は年々複雑になっています。将来の見通しが立てづらいなかで、後継者候補が経営という重い責任を引き受けることに二の足を踏むケースは少なくありません。

3. 事業承継の準備が計画的に進まない

日々の業務に追われるなかで、後継者の選定・育成は後回しにされがちです。「そのうち考えよう」と先延ばしにした結果、いざというときに準備が間に合わないという企業も多く見られます。

4. 親族の事業承継意欲の低下(脱ファミリー化の背景)

働き方や価値観の多様化により、経営者の子どもであっても必ずしも家業を継ぎたいとは限らなくなっています。市場の縮小や労働環境への不安から、家業を魅力的に感じにくくなっていることも背景にあります。

事業承継・M&Aに関する資料とデータをまとめた書類

後継者不足を放置するとどうなるか

後継者不足を放置すると、黒字であっても事業を続けられず、休業・廃業を選ばざるを得なくなるケースがあります。長年培ってきた技術やノウハウ、取引先との関係、従業員の雇用が一度に失われてしまうことは、企業にとってはもちろん、地域経済にとっても大きな損失です。「まだ大丈夫」と先延ばしにするほど、選べる選択肢は狭くなっていきます。

後継者不足への一般的な解決策

親族内承継

子どもや親族に事業を引き継ぐ、従来から最も多い方法です。信頼関係がすでにあるため引き継ぎがスムーズな一方、相続税・贈与税など税務面での事前準備が欠かせません。

従業員承継(社内昇格)

役員や従業員のなかから後継者を選ぶ方法です。会社の事業内容や取引先との関係を理解している人材であれば、比較的円滑な移行が期待できますが、株式取得のための資金調達などの準備が必要になります。

M&A(第三者承継)

社内に適任者がいない場合、第三者への譲渡によって事業を存続させる方法です。外部の資本や人材を得て事業が成長する可能性がある一方、信頼できる譲渡先を見つけるには専門家のサポートが有効です。

公的支援・専門家の活用

各地域の事業承継・引継ぎ支援センターなど、公的機関に相談する方法もあります。補助金や税制優遇の情報を得られるほか、中立的な立場でのアドバイスが受けられます。

【実践編】後継者・二代目経営者が今からできる4つの準備

先代と若手後継者が並んで立つ、事業承継のイメージ

ここまでは会社側・制度側から見た後継者不足の実態と一般的な解決策でした。ここからは、実際に後を継ぐ立場になる後継者・二代目経営者ご自身が、日々の業務のなかで取り組める準備を4つ紹介します。

1. 経営者としての意思決定の軸を持つ

先代の方針をそのまま引き継ぐだけでなく、「自分は何を大切にする経営者なのか」という軸を早い段階から言語化しておくことが重要です。判断に迷ったときに立ち返る軸があるだけで、意思決定のスピードと一貫性が大きく変わります。

2. 社内外への発信でリーダーとしての信頼を築く

後継者としての正当性は、肩書きだけで生まれるものではありません。コーポレートサイトやSNS、採用サイトなどを通じて自分の考えや会社の方向性を発信し続けることは、従業員・取引先・求職者からの信頼を積み重ねる有効な手段です。

3. 従業員・取引先との関係を自分の代で結び直す

先代の代からの関係性に頼りきりにせず、自分自身の言葉で従業員や取引先と向き合い、関係を築き直していく姿勢が求められます。特に採用面では、「二代目のもとで働く魅力」を明確に打ち出せるかどうかが、今後の組織づくりを左右します。

4. 一人で抱え込まず、外部パートナーを頼る

経営、税務、法務、ブランディング、採用――承継期に発生する課題は多岐にわたり、すべてを自社だけで抱え込む必要はありません。領域ごとに信頼できる外部パートナーと連携することで、経営に集中できる体制を整えられます。

まとめ

後継者不在率は7年連続で改善しているとはいえ、依然として2社に1社が後継者未定という状況です。原因を正しく理解し、親族内承継・従業員承継・M&A・公的支援といった選択肢を早めに整理しておくことが、廃業リスクを避ける第一歩になります。あわせて、後継者・二代目経営者自身が経営者としての軸を持ち、社内外への発信を続けることも、円滑な承継には欠かせません。

よくある質問

Q. 後継者不足は今後改善する見込みはありますか?
帝国データバンクの調査では後継者不在率は7年連続で改善しており、社内昇格による承継(脱ファミリー化)が広がるなど、承継の形自体が変化しています。ただし業種・地域による差は大きく、楽観はできない状況です。

Q. 後継者が決まっていない場合、何から始めればいいですか?
まずは親族内承継・従業員承継・M&Aのどれが自社にとって現実的かを整理することが第一歩です。判断が難しい場合は、早めに事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関や専門家に相談することをおすすめします。

Q. 事業承継の準備はいつから始めるべきですか?
一般的に、事業承継には5年から10年程度の準備期間が必要といわれています。後継者候補の育成や税務対策には時間がかかるため、「まだ早い」と感じる段階から少しずつ準備を進めることが望ましいです。

二代目経営者に伴走する「二代目の達人」について

SUNには、後継者・二代目経営者を支援するサービス「二代目の達人」があります。担当するのは、自身も二代目としてリーマンショック、震災、コロナ禍を乗り越えてきた現役の経営者です。

承継直後は、古参社員の反発や右腕候補の不正、若手社員の大量退職、さらには売上の3割を占める顧客の喪失など、組織の脆さを痛感する危機の連続でした。そこから理念の再構築、会議体の見直し、人事制度の整備に取り組み、広告代理店への依存から脱却して直取引を拡大し、新規営業の仕組み化も進めてきました。

コロナ禍でグラフィック事業の売上が大きく落ち込んだ際には、自らWEBマーケティング事業を立ち上げて構造転換を主導し、DX支援や採用ブランディングなど複数の新規事業も先導してきました。会社を守るだけでなく、構造ごと創り直す覚悟が二代目には求められる——そう痛感してきたからこそ言えることがあります。

孤独と不安を抱えながら経営を続けてきた日々、そして伴走者を喉から手が出るほど求めていた過去の経験こそが、いまの支援活動の原点です。

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